干しエビを売っている通りにまがると、
缶いりのチャーイェンを配布しているところに出くわした。
「チャーイェン配ってる!」
たろさんがすかさず近づいていって1本もらってきた。
味見すると、ごく普通の、タイのオレンジ色の甘ったるいミルクティだ。
屋台のドリンク屋でよく売っていて、
最近はセブンイレブンのドリンクサーバでもよく買うけど
缶に入ったのを見るのは初めて。
よく冷えていておいしかったので、
配ってるところに全員で行って、それぞれもらってきた。
たろさんなんか、持ち帰り用までもらってて、
そのあと空き缶をかえしにいったら
もう1本もらってしまったのでリュックにつめた。
おばあちゃんはこの通りで、いつものように干しエビを買った。
以前に、箱から出した干しエビの塊を
長靴で踏んでほぐしてた店だけど、気にしない。
サンペーンレーンにまがってすぐに
おじいちゃんは鼻毛きりハサミを買った。
おじいちゃんのお気に入りの鼻毛きりハサミは
以前飛行機に乗るときに持ち込み荷物に入れてしまって没収されたので、
かわりを探していたが、日本にはいいのがないのだそうだ。
刃物には当たり外れがあるけど、その場で鼻毛きって
試してみるわけにもいかないので、おじいちゃんは
目に入った鼻毛ばさみを次々買った。
最初に買ったのは60バーツ、そしてそのあと
歩いているあいだにいろいろ物色して、合計4本も買っていた。
一番高いやつは250バーツだった。
でも最初の1本が一番切れ味がよかったのだそうだ。
道端でみごとな刺繍をしているおじさんがいて、たろさんとけろりと
おばあちゃんが立ち止まりすっかり魅了されてしまった。
その刺繍は、ちょっとかわった針を使って行われていて
おじさんに言わせると、ミシンみたいに使える魔法の針なのだという。
その針が1本250バーツ(800円ぐらい)もするんだけど
魅了された3人がこれ買いたいと言い出した。
ええっ、こんな、ただのストローに注射針を挿したような
なんの変哲もない針に見える針に800円?
おじさんはいともたやすそうに、
均等な幅で正確に刺繍をほどこしていく。
私はそのシンプルな針にそんな機能があると思えなかったが
子供たちとおばあちゃんがもうすっかり熱くなってしまって
なんか熱意にまけてつい3本買ってしまった。
値切ったら一応、3本で500バーツにしてくれたけど
それでも高すぎるように思えた。
あとから考えるに、
あれは実演販売だったんじゃなくて
ただの手品師だった気がする。
どうやってもあのおじさんがやっていたようには
できなかったからだ。
というのも後日談だけど、日本に帰ってからこの針で刺繍してみようとした結果
この針で上手に刺繍するには、弾力のある、ちょうどいい密度の布と
すごくしなやかな、ちょうどいい太さの工業用刺繍糸が
必要だということがわかったからだ。
少なくとも、家にあるようなミシン糸では糸の張りが強すぎて
刺した糸が針といっしょに抜けてきてしまうし
適当なブロードやシーチングみたいな布では針の穴が目立ってしまう。
あのおじさんはあのできばえが実現できる絶妙な組み合わせを知っていて、
かつすばらしい色彩センスと画力も持っていて
おそらくは練習をかさねた結果、あの見事な刺繍の数々を
作り出せるようになってるのに違いなかった。
だけどまるで魔法のように、誰がやっても、
どんな糸とどんな布でもあの刺繍ができるのでなければ
誰も250バーツも出してあんな針買わないじゃない?
だからそういう細かいことまでは教えてくれなかったのよね。
さらに後日談なんだけど、私がその針で幾多の実験を繰り返してるとき
もちろん子供たちもやってみたんだけど、
たろさんの針がどうにも穴の位置が悪くて、要は不良品で
布に傷がついてしまってどうしても刺繍にならないの
それで、同じようなものはないかなって
中国の通販サイトアリババで探したら
あるわあるわ・・・100円ぐらいで売ってて日本にも
送料無料で発送してくれるんだよ。
アリババのは、届くまでに時間かかるんだけど
おそらく日本でそういうの輸入して日本から発送してるひともいて
amazonとかでも、2本セットで300円ぐらいで売ってるの。
いっとくけど私これ3本に
500バーツ(1800円ぐらい)払ってますんでね・・・(--;